礼拝説教
/2025年8月9日、10日 聖霊降臨後第9主日説教要旨
「天を見上げて生きる」
創世記15:1-6、ヘブライ11:1-3&8-16、ルカ12:32-40
「小さな群れよ、恐れるな。あなたたちの父は、喜んで天の国を下
さる」。励ましに満ちた、イエス様の言葉が語られました。小さな群れ
、というのはここでは特に初期キリスト教会、まさに小さな、弱い群れ
であった頃の教会を指します。戦争、迫害、飢饉…不安や混乱の中で神
様はあなたのことをちゃんと見ておられる、だから心配するな、とイエ
ス様は言われるのです。
しかし、今日の聖書では「目を覚ましていなさい」という言葉も語
られます。この世界、あるいは個人の命は決して永遠ではなく、いつか
必ず終わりが来る。その時に備えなさい、というメッセージです。そし
てそれは決して信じる者を畏れさせるためではなく、「今、目の前に見
えているこの現実が全てではなく、それを越えて神様はわたしたちを見
ておられる」ということを示すためです。
創世記15章は、聖書において「信仰の父」と呼ばれるアブラムにつ
いて語ります。アブラムの前に、神様が最初に現れたのは、アブラムが
もう75歳のときであったと聖書には記されています(創世記12章)。
その際、神はアブラムに「わたしはあなたの子孫を増やす」と約束し、
その神の言葉に従ってアブラムは旅立ったのですが、しかし今日の場面
で、そのアブラムの確信は揺らいでいます。聖書が示すアブラムの人生
は、決して順風満帆な人生ではなく、思うようにならないできごとの連
続であり、その中でアブラム自身、疑ったりあきらめたりしながら歩ん
でいた、ということです。
しかし、神様はそんなアブラムにこそ、こう約束されました。「あな
たの子孫は星のようになる」。この世界の中での私たちの歩みは、行き
詰まりや疑いの連続です。しかし、神はそのアブラムに「あなたの子孫
は天の星のようになる」と約束され、そしてその神さまが送ってくださ
ったイエス様もまた、この世界の希望を失っている者に対して「小さな
群れよ、恐れるな。」と言われます。
思うようになるわけではないことも多い人生、失望することもある人
生、しかし、私たちはそのただ中で、私たちの思いを越えて大きな方に
よって導かれている。そのことに信頼し、希望を見上げながら、地上の
歩みを続けたいのです。